60歳以上の父母や祖父母から、20歳以上の子や孫に対して、財産を贈与した場合に選ぶことが出来る贈与税の制度に「相続時精算課税」があります。
2,500万円を限度額とし、複数年に渡って贈与財産の価額の合計から特別控除を受けることが出来るので有効に活用したい制度ですが、贈与者が死亡したときなどに注意するべき点などがありますので、仕組みや内容を理解しておく必要があります。
贈与者1人につき、2,500万円までは贈与税が掛かりませんので、その額を超えた分に一律20%の贈与税が掛かります。
制度の適用対象となる贈与財産の種類、金額、贈与回数に制限はありません。
中古住宅を取得する場合、築後経過年数が取得の日前20年(耐火建築物は25年)以内、または新耐震基準に適合しているなどが条件です。
贈与財産が住宅取得資金の場合、贈与者の年齢が60歳未満でも制度が適用できる特例があるなどメリットは大きいでしょう。
そして贈与者が亡くなり、相続が発生した時に、贈与財産と相続財産を合算して相続税を決定するといった相続税への繰り延べが行われる形です。
支払った贈与税があれば相続税から控除し、控除しきれなかった分は還付を受けることが出来ます。
相続税に繰り延べが出来るということで、値上がりする可能性がある財産を贈与する場合には有利な制度と言えます。
ただし注意したい点もいくつかあり、贈与税には年の基礎控除額が110万円である「暦年課税」と上記の「相続時精算課税」の2つの課税制度が設けられています。それぞれに税金が掛からない額が設けられているので、併用するのではなく、いずれか一方を選ぶ必要があります。
ただし、相続時精算課税を選択した場合には、後で暦年課税を利用したくても変更することは出来なくなります。切り替えることは出来ませんので注意が必要です。
また、孫に対して相続時精算課税制度を適用する場合、贈与を受けた分は相続税を計算する時に加算することになりますが、本来、孫は相続人ではありません。そのため相続税の納税義務者となれば、相続税の2割加算の対象になり負担が大きくなる可能性があります。
贈与税は税率も高く、出来るだけ掛からない様に対策を行いたいものですが、相続時精算課税を利用する上でのメリットとデメリットを十分理解し、将来相続が生じた場合や、暦年課税などを利用した場合と比較しながら検討して決めるようにしましょう。